コティリエ在宅医療・訪問歯科ニュース
老々家庭の医療と支援

1 現状と展望
先般国が発表した最新の調査によると、いわゆる老々家庭が推定で約1,280万世帯、世帯全体の25パーセントを超えたということでした。
その調査結果から浮かび上がってくることは、地域格差がますます拡大し、高齢化が先行している地域では、老々世帯の割合は半数を超え、6割、7割に達するところもあるのでないかと推察されます。
一定の数の住民がいて住民税や固定資産税を払う、それを原資として役場が行政サービスをするというのが我が国の地方自治のシステムですが、年金以外の収入がない老々世帯が住民のほとんどを占め、やがては後を取る人がいない家だけが残され固定資産税の徴収もできない、市町村という地方自治の根幹となる形が成り立たなくなってしまい、この問題を放置したままでは、やがて地域崩壊が始まるのも時間の問題でしょう。
これはもちろん専ら政治の課題であって、在宅医療従事者が何とかするという問題ではありませんが、そのことからどのような課題が生じるかということは常に考えておく必要があるでしょう。
2 生じる課題
・まず考えられるのは、介護の担い手が家庭の中では期待できない、いないにも等しくなることでしょう。
いずれ最悪のケース、いわゆる老々介護予備軍となるでしょう。これでは利用者の生活が成り立たなくなることでしょう。
加齢と疾病の重度化を考えると生活が成り立たないということは「死」に直結するといっても過言ではありません。
・次いで考えられることは、利用者が外に出にくくなることです。
老々家庭が増えることによって住民サービスが低下し、公共の交通機関がなくなる、利用者の加齢によって運転もしづらくなり、やがて自動車にも乗れなくなる。
そうなると救急車を呼ぶほど緊迫した状態でない限りは、病院に行くこともやめてしまうことになりかねません。予防どころか、一気に状態が悪化しかねません。
3 在宅医療関係者にとってこれらの問題にどう対応するかが重要なテーマになります
・「共倒れ状態」(老々介護状態)になるのを防ぐ方策。
行政や他機関、あらゆるインフォーマルな組織、アンフォーマルな組織と連携して予防に努めることが重要になります。
・他の医療機関と連携し、医療のIT化を図ることにより効率的な医療とそれぞれの機関の専門性の発揮に努める方策。
すでに各地で行われていることですが、クリニックで撮影した画像をネットで大学病院、総合病院に送り専門性を高める、場合によっては手術にも応用することも必要でしょう。
・小規模な医療機関同士が連携して、訪問医療体制や訪問看護ステーションのネットワークを構築することも有効でしょう。
・地域特性等に配慮しながら、24時間体制の訪問介護体制のネットワーク化も有効でしょう。一つの組織では資金的に難しいこともネットワーク化することに国も様々な助成金や加算をすることでバックアップ態勢を整えています。
・これらの態勢を構築する上で人材不足に陥るのをリタイアした元職員の再雇用、再活用を図ることによって防ぐことも有効な方策です。
・元気な高齢者の活用、いわゆる「ソーシャルファーム」を構築することも有効な方策です。
以上のように在宅医療関係者にとって医療という面だけで考えれば済んでいた時代は終
わり、あらゆることを総合的に考えないと立ちいかない時代を迎えています。しかもこ
れから高齢化を迎える世界の様々な国が注視しています。