コティリエ在宅医療・訪問歯科ニュース
障害のある高齢者の医療と支援

1 現状と展望
平成22年の国勢調査やその他の資料によると、在宅で暮らす障害者(身体障害、知的障害、精神障害)の割合は人口比約5.8%、推定で約687万人です。このほか難病患者もいるわけです。年代別に分けた統計がないので推定が難しいのですが、かなりの数の障害のある人が地域で在宅の生活をしていると思われます。これらの人たちの中には、中高年になってから脳こうそく等の疾病の後遺障害で障害になったような人も含まれますが、先天性の障害のある人たちも含まれます。かつてはどちらかというと短命であるといわれた先天性の障害者も今後医療の進歩等により、確実に高齢化していくものと思われます。
2 高齢化に伴う障害者固有の問題点
●まず挙げられるのは、高齢化に伴う障害の重度化です。
それぞれの人たちにある固有の障害が加齢に伴い確実に重度化していきます。それによって生活のしづらさというものが、目に見えて増加してきます。今までは何とか出来た日常生活上の事柄がしづらくなったり、できなくなってくる。当たり前のことですが、耳が遠くなる、目が見えなくなってくる、体の様々な器官や機能が衰えてきます。そこにもともとの障害が加わるのですから重度化は加速化されるわけです。そして生活がしづらくなると、それに伴って社会参加もしづらくなり、家に引きこもりがちになります。そうなると加速的に障害の重度化が進むでしょう。
●生きる意欲が減衰し、うつ状態に陥ったり認知症化が進む。
何事もやる気がうせ、老老介護の家庭では、認知殺人、心中などの遠因にもなりかねません。
3 制度上の問題点
年齢によって障害者総合支援法と介護保険法と制度が分けられているので、障害者としていろいろな支援、サービスを受けていたのが、65歳という年齢を境に、介護保険と重複するサービスは打ち切られて専ら介護保険で受けるようになります。何が問題かというと、障害の制度では特別に高額所得者でない限り、ほとんど自己負担なしで福祉用具等の給付を受けたり、施設にショートスティをしたり、ヘルパー利用したりできるのです。ところが65歳になると例外なく費用の1割負担をするようになるのです。この経済的負担が重くのしかかり、ショートスティやヘルパーの利用をやめて、その結果家族の介護負担が増えているというような問題を引き起こしているのです。しかも、障害が重度であればあるほどサービスなしで在宅の生活を維持できないのに経済的な負担が大きくなるのです。サービスの利用をあきらめるということは、利用者の入所化を早めるということです。入所者が増えるということは、間違いなく国の負担増を招くのです。ほとんどの障害者が年金頼みの生活をしています。この問題は、行政側のこれからの課題でしょう。
4 在宅医療関係者にとってこれらの問題にどう対応するか。
①加齢とともに障害が重度化するという要因に対応する。
啓発活動によって重度化を防ぐ対策、例えば行政とタイアップして健康教室に積極的に参加を促す、必ず所定の健康診断を受けるよう促すなどの対策が必要でしょう。
②従事する職員への教養を推進する。
機会あるごとに障害のある高齢者の現況、問題点等についての周知を図り、利用者の心情を理解した対応に努める。
③経済的負担の軽減を図る。
できるだけジェネリック薬品を使ったり、不急不要な薬の使用をやめる。
訪問看護や訪問介護を効率よく運用して時間の短縮化により利用者の負担を減らすようにする。
④ボランティア団体等インフォーマルな社会資源を積極的に活用する。
⑤行政と問題点を協議する場を設ける。
これから超高齢化社会を迎えるにあたり、在宅医療従事者も発想の転換をしてお金の足
りないところは知恵と工夫が求められるでしょう。